小学校学習指導要領、道徳の問題点

小学校学習指導要領道徳については文部省のウエブサイトに情報があるが、道徳に関して問題点とするべきことは「C主として集団や社会との関わりに関すること」である。

日本国憲法では第十三条で
すべて国民は、個人として尊重される。
と定めてある。そして第十四条では以下のように定められている。
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
なので、本来であれば道徳教育についてもこれを踏まえたものでなければいけない。しかし学習指導要領の道徳に関しての指針においては『格差を設け』て【上下関係を作り出し】、「下位の者は上位のものに従わなければならない」ごときの内容になっている。

その項目としては『家族愛,家庭生活の充実』と『よりよい学校生活,集団生活の充実』であって、「小学校第1学年及び第2学年」においては
(13)父母,祖父母を敬愛し,進んで家の手伝いなどをして,家族の役に立つこと。
(14)先生を敬愛し,学校の人々に親しんで,学級や学校の生活を楽しくすること。
とされている。敬愛とは「(ある人を)尊敬し、親しみの心をもつこと」であるが、「無条件に敬愛しろ」としているのである。「何で敬愛すべき」なのかは授業で教える予定にしているのかもしれないが、言葉の意味を教えることはともかくとして、対象を固定化することは『格差を設けよう』というのと同じである。
なので、敬愛という言葉を使うのではなく『親しみをもち』とするべきである。

「小学校第3学年及び第4学年」なると、『能動的に行わなければならない』といった調子にされる。
(14)父母,祖父母を敬愛し,家族みんなで協力し合って楽しい家庭をつくること。
(15)先生や学校の人々を敬愛し,みんなで協力し合って楽しい学級や学校をつくること。
「小学校第5学年及び第6学年」なると、より調子が強まる。
(15)父母,祖父母を敬愛し,家族の幸せを求めて,進んで役に立つことをすること
(16)先生や学校の人々を敬愛し,みんなで協力し合ってよりよい学級や学校をつくるとともに,様々な集団の中での自分の役割を自覚して集団生活の充実に努めること。
特に(16)の内容は重要で、『全体主義社会』に特有な【個人は全体に奉仕するべき存在】と位置付けている。つまりは「個人より集団が上位に位置する」という考えが背景にあってこその表現と言えよう。

続いて大問題とされる『伝統と文化の尊重,国や郷土を愛する態度』についてだが、「小学校第1学年及び第2学年」においての指針は以下のようになっている。
(15)我が国や郷土の文化と生活に親しみ,愛着をもつこと
単に「郷土の文化と生活」であればパン屋は無論、コンビニが登場しても不適だとは言えない。しかし『我が国』が付け足されてしまうと、【伝統文化】という概念が入り込んでしまい、【日本固有の文化】でなければいけないことになってしまう。

とは言っても文化は他の地域に伝えられ、その土地の文化に影響を与えるものなので、何が日本固有の文化であるのかを判断するのは容易ではない。そこで『より日本的な文化』の和菓子店ならOKということになったものと思われる。

「小学校第3学年及び第4学」なると以下のように変わる。
(16)我が国や郷土の伝統と文化を大切にし,国や郷土を愛する心をもつこと

「親しみ」が『大切にし』になり、「愛着」が『愛する心をもつこと』に置き換えられている。問題なのは『家族愛,家庭生活の充実』の項目において『愛する心』が出てこないにも関わらず、『国や郷土を愛する態度』においてのみ『愛する心』を登場させていることである。それはつまり、「家族愛」より「国家への愛」を優先させようというためであって、大東亜戦争時における「家族」と「国家」との関係を彷彿させる。

「小学校第5学年及び第6学」なると調子が加速する。
(17)我が国や郷土の伝統と文化を大切にし,先人の努力を知り,国や郷土を愛する心をもつこと。

『先人の努力を知り』が登場してくる。これだけでは何を意味してるのかは不明だが、おそらくは【国に殉じた人】のことを指し示しているのだろう。つまりは早い話し、【国のためには命を捨てよ】ということだと捉えられる。

この国とはなにかといえば「天皇のこと」であり、【天皇のためには命を捨てよ】ということを幼いうちから叩き込もうというわけで、基本的には話題になった塚本幼稚園とさほど変わらないことを意図しているのである。
2017年04月07日