基本的人権を大幅に制限しつつ天皇を日本の元首に位置づける
というのが
自民党による「改悪憲法草案」である。
日本国憲法は帝国憲法とは根幹的な相違がある。帝国憲法は天皇を日本の君主として定めつつ陸海軍を天皇の統率下に置き、
国民は臣民として天皇に隷属するというのが根幹であった。
帝国憲法においても人権について謳われていた。但し人権の補償範囲については「法律の定める所により」「法律の範囲内において」といった文言により、【法律を変えさせすればなんとでも出来る】という性質であった。
更には帝国憲法第31条において
本章に掲げた条規は、戦時又は国家事変の場合において天皇大権の施行を妨げるものではない。
と定められており、全ては【天皇のさじ加減】として何とでも出来たわけで、言うなれば
天皇は北朝鮮の国家主席である金正恩と同じ立場だったのである。
日本国憲法は【国家権力を制限かつ抑制】するために種々のことが定められている。基本的人権については第十一条で
国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。
とし、第十三条において
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
とされ、基本的人権は【公共の福祉に反しない限り】認められると定められている。この
公共の福祉とは他の個人との人権との兼ね合いよってということであって、
国家を含め「公共の利益や多数者の利益」によって損なわれることはないということである。
天皇については第一条で
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
とされ、天皇は国旗・国歌・国花と同じものと位置付けされた。つまりは
【天皇は飾り物(もしくは、装飾品)】であって、何ら政治的実権はなく、天皇と政治との関係は第六条および第七条によって規定され
第六条 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
○2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。
第七条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
天皇は【内閣の小使い】であって、且つ国会議員と同様に『国家公務員』であるとされた。そして憲法で定めてない天皇の行為は『全て私事』であり、天皇が政治に口出しすることは【憲法違反】として取り扱われることになったのである。
自民党の改悪憲法草案は
このリンクから読める。
改悪憲法草案は前文からして日本国憲法と大きく異なっている。日本国憲法では「恒久平和」を第一義とし、【専制と隷従、圧迫と偏狭を除去】することを第二義として掲げているが、改悪憲法草案ではこれらのことは取り除かれている。
そして代わりに『天皇を日本のトップに据え』、
【国粋主義を高らかに謳い上げる】ものとなっている。
改悪憲法草案第一条で『天皇を日本の元首』として位置付け、第三条では日章旗ならびに【天皇の治世を称える歌】である君が代を定めつつ、第二項において
「日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければいけない」として『偶像崇拝を求め』、敷いては【天皇の位置づけを不動のもの】にしようと定めている。
天皇の国事行為については第六条で『天皇jは国民のために』という「お仕着せ蒲しい」表現を付け加え、また『最高裁判所の裁判官を(天皇)が任命する』ものとして、
【三権分立を損なわせる】ことを定めている。つまりは【内閣が司法を思うがままに操れる】ことを意図しているのである。
第九条においては【自衛権を盛り込み】、
自衛を名目にすれば侵略戦争でも行えることを匂わす表現になっている。それは『攻撃は最大の防御なり』として活かすことができるからだ。
そして第二項で国防軍について定め、【暗に徴兵制を行える】ような表現に仕立て上げられている。
基本的人権については、日本国憲法では「基本的人権の享有を妨げられない」を改悪憲法草案では『共有する』に変えられ、日本国憲法では「現在及び将来の国民に与えられる」とされているものが、
改悪憲法草案では『権利である』とだけに留まり、【名目ではそうだ】といったニュアンスにされてしまってる。
また基本的人権の補償範囲が日本国憲法では【公共の福祉に反しない限り】であったものが、改悪憲法草案では『自由及び権利には責任が伴うことを自覚し』が付け加えられつつ、【公益及び公の秩序に反してはいけない】として、
国家及び多数者の便宜を第一にすると改悪されている。つまりは
【国家権力のやり放題にできるようにしよう】というわけなのだ。
つまりは帝国憲法の趣旨と殆ど変わらないものに変えてしまおうというわけで、【国家権力を制限し、且つ抑制】するための日本国憲法とは全く異なるものにしようというのが改悪憲法の本旨なのである。
2017年05月02日