私が以前に調べてみた話とは違っている

◆セルビアで「吸血鬼警報」、その真相は
◆なぜ昔の人々は吸血鬼の存在を信じるようになったのでしょう?

【ボリーニ氏】特に16〜18世紀の間は、死後の人体にどのような変化が起きるかはほとんど知られていなかった。ペストなどの伝染病が流行している期間には、共同墓地では新たな遺体を埋葬するため、墓が開けられることもしばしばだった。時には死因を突き止めるため、埋葬後の遺体が掘り起こされることもあった。吸血鬼に関する報告は、腐敗の過程にある、死後数週間から数カ月にかけての遺体の様子を描写したものだ。

【ジェンキンス氏】当時の遺体は防腐処置が施されていなかった。そのため、今とは腐敗の状況も大きく異なっていた。多くの村人が続けざまに不可解な死を遂げ始めると、村の住民は最初に亡くなった人の墓を掘り起こし、その遺体が見慣れない様子になっているのを目の当たりにし、頬を伝っている液体を血だと誤解したのだ(この液体は現代の法医学では腐敗から自然に生ずる副産物であり、血液ではないと考えられている)。多くの場合、こうした遺体は焼却され、吸血鬼は息の根を断たれた。
何かの折に埋葬された墓を開いたことまでは同じだが、「頬を伝っている液体を血だと誤解したのだ」ということではなく、埋葬されてから随分経っているにも関わらず1『腐敗が見られず、今死んだかのようにみずみずしい状態だった』ために、その原因が生命の源である血液を摂取したためと思われたということだった。
そしてまた、腐敗が見られない状態が生じていた理由として「土中の成分が関係している」とされていた。ただその成分とはどのようなものであるかについての記述は無かった。

「吸血鬼は架空の存在かどうか」についてははっきりしてない。というか、幾分運臭い系統の書物において「肉体を保持しての吸血鬼は存在してないが、肉体を持たない吸血鬼のような霊は存在する」とされていたからである。つまりは肉体を離れた霊は次第に昇華して個体としての意識は消滅するものであるが、そうはなりたくないために血を吸うことによってこの世近くに留まろうとするということだった。ただしその場合に、吸われた人の肉体に目に見える痕跡が残るかどうかについて書かれていたかどうかについての記憶はない。

吸血鬼伝承を題材にしてブラム・ストーカーが著した「吸血鬼ドラキュラ」は富に有名であるが、シェリダン・レ・ファニュによる「吸血鬼カーミラ」それにジョン・ポリドリの「吸血鬼」など、吸血鬼を扱った作品は少なくない。私が所蔵している「怪奇幻想の文学第一巻真紅の法悦」には、今上げた作品の他にもE・F・ベンソン「党の中の部屋」、F・G・ローリング「サラの墓」、F・マリオン・クロフォード「血こそ命なれば」、カール・ジャコビ「黒の告白」、M・W・ウェルマン「月のさやけき夜」、リチャード・マチスン「血の末裔」、D・H・ケラー「月を描く人」、ジョン・メトカーフ「死者の競演」が収納されている。

しかし吸血鬼としての定義もしくは外観が形成されたのは映画によるところが大きくて、本当に吸血鬼が存在していたとしても映画で描かれたようなものであるという保証はない。
2012年12月19日