ダウン症検査の妨害に務める、財団法人日本ダウン症協会

2012年8月29日に「妊婦血液で出生前にダウン症診断 精度99%、9月導入」というニュースが流されたが、受診条件が「35歳以上が対象で、費用は約21万」ということから高齢出産への新しい対応だと見て取れる。

このニュースから数日を経た9月1日に日本産婦人科学会は『妊婦血液でダウン症診断「安易な実施慎むべき」』との声明を出し、『倫理的な課題が多いとして「安易な実施は厳に慎むべきだ」』とか『検査が広範囲に実施された場合、社会に大きな混乱を招くことが懸念される』と主張した。
(注:現時点においてこの声明は、日本産婦人科学会のホームページでの声明カテゴリーに見当たらない)

高齢出産については母体の危険とともにダウン症の子供が生まれる確率が高まるために臨床研究という名目であっても実施されるのは真に結構なことである。因みにダウン症児の出生率は「20歳で1667分の1、30歳で952分の1、35歳で378分の1、40歳で106分の1、45歳で 30分の1」で、ダウン症以外の何らかの染色体異常の出生率は「20歳では526分の1、30歳では385分の1、35歳では192分の1、40歳では66分の1、45歳では21分の1」とされている。(出典

因みに從來は検査方法としてクワトロテストや羊水検査が主に行われていた。検査費用としては羊水検査は10万円前後、クワトロ検査は1万円から2万円が相場らしいがいづれの検査も保険適用外である。
それに対して精度が99%のDNA検査費用は21万円である。從來の検査方法の精度はどれだけだったのかは分からないが、万が一ということを考えるなら高額であっても精度の高い検査を希望することだろう。 もしダウン症児が生まれてしまえば親や当の子どもの負担は並大抵なことではないことが推察できるからである。

現状について考えるのであれば、日本産婦人科学会は検査受診を妊婦に勧めるようすべての産婦人科医及び病院に対して通達を出すべきであるが、実際には「論理課題が多い」ということを理由にして「診断の実施を慎むべき」との声明を出した。となれば、その裏には何かあるのではないかと思うのが通常の人ではないかと思う。

そこで調べてみたところ「財団法人 日本ダウン症協会」に驚くべき内容の意見書が登録されていた。その意見書は平成24年8月27日付けで「公益社団法人日本産科婦人科学会理事長」に宛てたもので、まず
1 出生前検査・診断に関する基本的な考え方の更なる明示を当協会は、「出生前検査・診断がマススクリーニングとして一般化することや、安易に行われることに断固反対」の立場をとっています。
と主張し、続いて
胎児の遺伝子診断が高精度で一般の検査同様に血液検査で同じようにできるからといって妊婦に紹介されたり実施されたりすることには、当事者団体として強く異議を申し立てます。貴学会見解においても、胎児の情報を安易に知ることは生命倫理に鑑み一定の条件内でのみ行われるべきであるとされています。
と述べられていた。

つまりは日本産婦人科学会の声明は財団法人ダウン症協会の意見書によって圧力をかけられたことにより、それに屈した日本産婦人科学会が科学の進歩並びに高齢出産する妊婦の切なる願いを蹴ってまで、財団法人ダウン症協会に与する声明を出すことになったわけである。

財団法人ダウン症協会が既にダウン症として生まれた子供及びその家族との絆を強め且つ援助を行うことを目的にしているのであれば協会の存在意義はあるが、ダウン症児として生まれてしまう可能性を抑制するための検査に対して異議を唱えるに至っては財団法人ダウン症協会の存在意義はないに等しい

財団法人ダウン症協会としてはダウン症として生まれてくる子供が今後減るようなことがあれば財団法人としての存続が危ぶまれ、且つダウン症児に対しての冷たい目が加速することを恐れての意見書であったのかもしれないものの、とどのつまりは他人の不幸の歓迎もしくは他者を自分たちの位置にまで引きずり下ろしてしまおうということを望んでいるのと同じことである。またそれと同時にダウン症児への社会保障に投入される税金の増大についてもまるで考えてないわけで、当然ながら妊婦に対してのダウン症並びに他の精神及び肉体的疾患の可能性を調べる検査が義務付けられる気配を感知すれば今回に増して妨害行動をすることが予想できる。

それは今回の日本産科婦人科学会理事長に対しての意見書以前(平成11年6月23日)において「母体血清マーカー検査に関する見解(報告)」というタイトルの文面が登録されている。この報告書自体は「厚生科学審議会先端医療技術評価部会出生前診断に関する専門委員会」によって作成されたものであるけれど、その文面の一部が赤字で示されて強調されていたわけである。赤字部分は数カ所あるけれど、最初の赤字部分は次のようなものである。
この技術の一部は障害のある胎児の出生を排除し、ひいては障害のある者の生きる権利と命の尊重を否定することにつながるとの懸念がある。
つまりは財団法人ダウン症協会として強調したい部分が赤字で示してあるわけで、『障害のある胎児の出生の排除が、既に障害を持っている人の生きる権利と命の尊重を否定することにつながる』という屁理屈を言わんとしているのに等しいわけなのだ。

「厚生科学審議会先端医療技術評価部会出生前診断に関する専門委員会」のメンバーに財団法人ダウン症協会の人が参加していたかどうかまでは確認してないものの、殊更赤字で示してあるからには九分九厘参加しており、政府の審議会にまで手を伸ばして財団法人ダウン症協会ならではのエゴを押し通そうと図っていると言えるかもしれない。
2012年09月02日