#1/2540 路傍の石 ★タイトル (ZEJ21671) 90/12/18 10:27 ( 40) 「ホーキング最新宇宙論」・・・一番星 ★内容 日本放送出版会、1100円 カミュは『シジフォスの神話』で(と言っても最初の処しか読んでないけどね、ガリレ オの発見した科学的真理を評して”そんな真理は火あぶりにされるには値しない”と書 いている。そして次ぎのように続けている。 『地球が太陽の周りをまわるのか太陽が地球の周りをまわるのか、これは実際のところ  どうでもよいことなのだ。言ってしまえば、これは下らない問題だ。これに反して私  は、多くの人間が、人生は生きるに値しないと考えるが故に死んでいくのを眼にして  いる。(中略)だから、私は人生の意味こそ最も緊急な問題であると判断する。』 私は、このホーキングの一般読者向けの最新の講演集を読みながら、何度も上記の カミュの言葉を思い出した。 この宇宙はホーキングの言うように、それが物理学の言葉であるにせよ、完全に完璧に 語り尽くされる時がくるのだろうか。ホーキングは、今世紀中にそれが可能だろうと言 う。かの天才・ホーキングの予測なんだから、恐らく、そうだろう。 完璧といっても、不確定性原理などの規定するあいまいさは残存するにせよ、われわれ 同胞の人類は、この世の究極のありようを知ってしまうことになる。本当だろうか。 そして、もし、それが本当に実現したとき、上記のカミュの言葉はどういう色彩をもっ てくるのだろうか。 新聞をみれば、今日もまた、沿岸情勢がどうのこうのと騒がしい。カミュの言うように 相変わらず人間どもは”自分たちに生存理由を与える観念や幻想のために殺し合いをす るという自己撞着を犯している。” E=mC^2 は、その神秘的とも思われる美しさをよそに、よく云われるように、 人類はその方程式から原爆をも導きだした。 神とは何だか私は知らないけれど、しかし、現代の帝王である物理学が、もし、神は不 要だと断言してしまったなら、たとえ、神の無用さが”事実”であったにせよ、それを 断言してしまったなら、そのあと、なにが人間に残されるのだろうか。人類の知性の勝 利?